X facebook line

vol.22 どうなる? 日本の食の未来 フードテック第一人者に聞く(後)

国内最大級のグローバルフードテックカンファレンス「SKS JAPAN」を開催するフードテックの第一人者・田中宏隆さん(株式会社UnlocX代表取締役CEO)に、今後の日本の食産業の行方についてお聞きするインタビューの後編です。

 

前編では、第1回「SKS JAPAN」を開いた2017年までさかのぼり、田中さんが紹介した「フードテック」の概念が、産業界にどのようなインパクトを与えたか?を駆け足で紹介しました。

田中宏隆さん(以下田中):「日本における「フードテック革命第1ステージ」とも言えるこの時期には、さまざまなスタートアップ企業が登場し、政府が補助金によって研究開発を後押しするようになりました」

田中さんは2025年以降、現在までを第2ステージの段階だと言います。第2ステージに入ってからは、前述のスタートアップに加えて、不動産など他の業種からの関心が集まるようになりました。

三井不動産の「&mog Food Lab」もそのひとつで、創業の地である日本橋で「食のイノベーション」を起こそうというプロジェクトが展開しています。そして2025年秋、政府は「17の戦略分野における官民投資」を発表し、フードテック分野が成長産業のひとつに選ばれました。

 

田中:「そしてこれがとても重要なのですが、2023年以降、世界から日本に対するラブコールが加速しているんです。海外でも食と健康の問題や食糧危機にひもづく新しい食産業が立ち上がっていますが、そのヒントを日本に求めている。高齢化先進国であり高い食文化・食加工技術、そして〝本物の価値〟を持つ日本は何か持っていそうだ、と」

確かに代替食などの超加工食品を作らなくても、日本には精進料理や、発酵という微生物と共に育んできた食文化があります。田中さんは「日本の伝統食文化をグローバル化する存在がいなかった。そこで起こるのは価値の流出です」と危機感を示しています。

田中:「たとえば、すでに海外企業が日本の麹菌に目をつけ〝日本の伝統的な発酵技術を活用したオーツミルク〟として販売、日本の素材を価値化して儲けています。
いま日本が動けば大きな対価を得られますが、動かなければ衰退してゆく可能性が高い。分岐点にいるとはそういうことです。
さらに日本の食が危機的なのは、食料主権がないこと。自給率が低く、生産者・つくり手の減少も激しい。このままでは食べ物が作れない国になる。それを回避する鍵を、グローバル化が握っています。
つまり、内外価格差を逆に利用し、海外から対価を獲得するのです。ただし商品単品では負けてしまう。技術や文化をOS化、プラットフォーム化してシステムとして輸出し、日本の技術に対して価値を感じさせるだけでなく、対価を還元する仕組みが必要だと思います」

いま、田中さんが考えているのは「作れば作るほど人と文化が残る食産業」の形だと言います。

田中:「第1ステージまで、フードテック界は技術開発を追いかけがちな傾向がありました。
でも大事なのはものを食べる原点に戻って〝持続可能な食〟を考えること。
各国が食料主権を考えているいまだからこそ、日本も自ら動き出す必要がある。
そのため11月のSKS JAPANでは国単位で連携を議論するセッションを設ける予定です。世界各地で活動する組織を招いて、日本が何をシステム化しグローバル化できるかを考えたい」

食べ物を作り続けられる国であるために、どう生き残るのか? ──答えはまだないが、明確なことがある。それは〝いま動くこと〟の必要性なのだ。

2025年のSKS JAPANの様子(撮影:Yuki Kimishima)

お話を伺った方
田中宏隆さん
株式会社UnlocX代表取締役CEO。パナソニックを経て、McKinsey & Companyにてハイテク・通信業界を中心に8年間に渡り、成長戦略立案・実行、M&A、新事業開発、ベンチャー協業などに従事。 2017年シグマクシスに参画しグローバルフードテックサミット「SKS JAPAN」を立ち上げ。食に関わる事業開発伴走、コミュニティづくりに取り組むなかで、食のエコシステムづくりを目指し2023年10月株式会社UnlocXを創設。「フードテック革命」(2020年/日経BP)、「フードテックで変わる食の未来」(2025年/PHP新書)、「教養としてのフードテック」(2025年/日経BP)共著。

Text: Kie Oku
Photo: Kazue Shibuya

pagetop