vol.19 〝つなぐ〟から生まれる食の新しい可能性(前)
新しい技術や商品が次々と生まれる食の世界。一方で、それらを世の中へ届けるには多くの壁がある。
街と人、企業と市場、技術と食の現場をつなぐことで、新たな価値の創出を目指す三井不動産の「& m o g 」。
立ち上げからプロジェクトを支えるコンサルティング企業「シグマクシス」の福本都さんと、三井不動産の吉田信貴さんが、
その歩みとこれからを語り合った対談の前編をお届けします。
働く人も、暮らす人もいる日本橋だからできたこと
吉田 三井不動産はさまざまな街の関係者と共に、日本橋のまちづくりに取り組んできました。そのなかで欠かせない存在だったのが食産業です。食に関わる企業との接点が増えるにつれ、さまざまな課題が見えてきました。
また、私たちが運営する商業施設をはじめとする、人が集まる場を活用したいといった声が寄せられるようになり、立ち上げたのが食産業の発展を支援する「&mog」です。食の業界への知見が深いシグマクシスとの連携が、福本さんとの歩みの始まりです。
福本 シグマクシスはコンサルティング企業で、私は食や農業分野を専門としています。当初、三井不動産からは「食産業の発展に向けて、何ができるか」という相談を受けました。そこで着目したのが、三井不動産が持つ「場」の価値です。食に関わる企業では、新しい技術や商品が生まれても、その価値を実証できる機会が限られていました。
一方で、三井不動産には商業施設をはじめ、人が集まる場があります。その強みを生かすことで、食の事業開発を後押ししながら、街の賑わいにもつなげられるのではないか。そうした発想から、現在の「&mog」の形を提案しました。
吉田 当初は、日本橋エリアの価値向上も私たちのミッションのひとつでした。そこで、食産業を支援する機能を育てていこうと考えました。商業施設でのテスト出店を皮切りに、三井不動産のネットワークを活用した試食会や商談会などの取り組みを始めました。


福本 日本橋だからこそ意味があったと思っています。働く、住む、訪れるなど多彩な文脈をもつ、幅広い年齢層の人が集まる街だからこそ、実現できたことがたくさんありました。
支援先企業にとっても、実際に商品を手に取る人たちの生の声や反応を直接知ることは大 きな価値がありました。
──「&mog」に取り組むなかでは、どういった課題があったのでしょうか?
吉田 たとえば、支援先企業がテスト出店をするにあたって、ブランド名を伏せたいという希望がある場合、誰が作って、誰が店頭で販売するのかといった課題に直面します。場所もある、仮説もある、検証したい項目もある。しかし、誰でも販売ができるわけではない。販売を担うパートナーも必要になる。
福本 食品やサービスは安全性や品質への責任が伴いますから。だからこそ、新しいアイデアがあっても、慎重な検証が求められます。
吉田 加えて、私個人として難しく感じたのは、企業ごとの規制や基準が想像以上に異なったことです。今話した課題ひとつでも、企業によって解決策が違います。
(後編に続く)

ご登場いただいた方
(写真左)
福本 都(ふくもと みやこ)さん
株式会社シグマクシス マネージャー。東京大学卒業。東京大学大学院社会心理学専攻修士課程修了。2020年にシグマクシスに入社。フード・アグリ専門チームに所属し、日々食の課題と向き合い。「&mog」の立ち上げからサポートする。
(写真右)
吉田信貴(よしだ のぶたか)さん
三井不動産株式会社 日本橋街づくり推進部 事業グループ。大学・大学院時代には航空宇宙工学を専攻し、2023年に三井不動産に入社。日本橋街づくり推進部に所属し、「&mog by Mitsui Fudosan」を推進中。
text: Yuki Kimishima
photo: Kazue Shibuya

