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vol.11 伝統を継承し、未来を作る「&mog by Mistui Fudosan」に共鳴。プレミアムノンアルコール飲料がもたらすラグジュアリーな体験を日本橋から創出・発信【三井不動産 ✕ COLDRAW】

“ソバ―キュリアス”を追い風に
ノンアルコールドリンクによる
新たな食文化の創出を目指す

COLDRAW日本橋抽出所として「ニホンバシ桜屋台」の出店にも携わった前田悠図さんと西村明日香さん。

今年2月、三井不動産初となる食の研究開発支援施設「&mog Food Lab」内にオープンした「COLDRAW(コールドロー)日本橋抽出所」。運営を行うCOLDRAW株式会社は、茶葉やハーブなど複数の植物素材を独自の低温減圧技術で抽出し、フレッシュで奥深い味わいのプレミアムノンアルコール飲料を開発・提供するスタートアップ企業だ。

今回は、同社で飲料開発を務める前田悠図さんと西村明日香さんに、事業内容や「&mog Food Lab」に拠点を構えた目的などについて話を伺った。

まず、事業化に至った背景として、前田さんは“ソバ―キュリアス”というワードを挙げた。これは、“sober(シラフ)”と“curious(好奇心)”を組み合わせた造語で、お酒を飲める人があえて飲まない、もしくは少量しか飲まないというライフスタイルや価値観のこと。健康意識やサステナビリティへの関心の高まりなどから、欧米の若者を中心に世界各国で広がりを見せている。

飲料開発に携わる前田悠図さん。アートホテル(BnA HOTEL)を創業、アーティストと共に「アート作品に泊まる」ホテルを事業化。不動産関連事業開発の企画プロデュースやコンサルティング、ジャカルタでのヘアサロン事業や国内でのバケーションレンタル事業の企画などにも携わる。

「日本でも、ここ数年で多様なノンアルコール飲料を提供するバーやレストランが増えてきました。一方で、糖分が多くて甘すぎたり、健康志向ではあるもののおいしさに欠けていたりと、その選択肢は依然として限られているのが現状です。こうした課題を踏まえ、ノンアルコールドリンクによる新たな食文化の創出を目指し、オープンイノベーションプロジェクト『Sober Experience Studio(ソバー・エクスペリエンス・スタジオ)』を有志で立ち上げました」(前田さん)

コロナ禍前に始動したこのプロジェクトでは、多様性・持続性・文化的変容をキーワードに、研究者、起業家、クリエイターらと連携しながら革新的な抽出技術を用いた新時代のノンアルコール飲料を探求。その結果、人工甘味料や砂糖を使用せず、食事にも合うおいしいクラフトノンアルコール飲料を生み出すことに成功したのだという。

それを支えるのが、独自の低温減圧技術を搭載した「COLDRAW抽出機」だ。茶葉のうま味成分を引き出す手法としては“水出し”が広く知られているが、抽出時間が長くなることで雑味が増え、風味が損なわれるなどの課題があった。そこで、容器内の圧力を真空状態に減圧し、その後、再び常圧に戻すプロセスを繰り返すことでこれらの問題を解決。抽出時間も10分程度に短縮し、新鮮でクリアな色・香り・味わいをバランスよく引き出せるようになった。

2024年にアメリカで開催された世界最大規模のテクノロジー見本市CES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)でイノベーションアワードを受賞。抽出技術は国内特許も取得済みだ。

2024年1月にアメリカで開催された世界最大規模のテクノロジー見本市『CES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)』では、COLDRAW抽出機を展示し、Food & Tech部門でイノベーションアワードを受賞。この評価を受けて事業化を加速させ、同年10月にCOLDRAW株式会社を設立したと前田さんは話す。

「&mog Food Lab」の2階に開設した「COLDRAW日本橋抽出所」は、研究開発と、そこで生まれた製品の抽出施設として開設。自社レシピに加えて、飲食店の料理と調和するオリジナルドリンクの開発も手掛けていく。

西村明日香さんは飲料メーカーで商品企画と広告宣伝を担当。食品メーカーで菓子と健康食品のブランドマネージャーを歴任。飲料メーカー在籍時に地方創生に興味を持つ。現在はフリーランスとして地方自治体や企業のマーケティングPJにも携わる。

「ラボには飲食店と同等の厨房設備のほか、ドリンクの瓶詰めに必要なスクリューキャッパーなどの専用機器も揃えて頂き、開発や製造をスムーズにスタートできました。ミーティングルームも併設されているため、顧客との打ち合わせや試飲会を行う環境も整っていて助かります」と西村さん。

さらに、「&mog Food Lab」に拠点を構えた理由について次のように続けた。

「かつて日本橋は五街道の起点として、全国各地の特産品が集まる要所でした。寿司や天ぷらといった日本を代表する食文化もこの地で発展を遂げています。そうした食のイノベーションの歴史を受け継ぐ日本橋で、未来に繋がる新たな食の可能性を創出する『&mog by Mitsui Fudosan』の取り組みは、私達のビジョンと深く通じ合うものがあります。さらに、飲食店をはじめとする日本橋の人や企業との繋がりを期待できることも、ここに抽出所を設置した大きな理由の一つです。実際、3月に開催された『ニホンバシ桜屋台』にも参加させて頂き、周辺の飲食店はもちろん、この場所を訪れる一般の方々との接点も得ることができました。街全体でCOLDRAWの都市実装まで支援頂けるところが『&mog by Mitsui Fudosan』の魅力だと感じています」

「ニホンバシ桜屋台」では柑橘と阿波番茶を組み合わせた「阿波柑」、華やかな香りの「桜」、緑茶にバニラをブレンドした「春緑」が販売された。

現在、施設で開発中のドリンクは、瓶詰めの清涼飲料水、抽出したてのオリジナルドリンクを屋外イベントなどで提供するフレッシュデリバリーの2種類。「ニホンバシ桜屋台」では桜と春をテーマにブレンドしたフレッシュデリバリーを販売し、“日本橋発のネイチャーカクテル”として来場者にアピールした。

来年には、飲食店に向けたCOLDRAW抽出機のレンタルも検討しており、それに合わせるティーバッグも開発予定だ。抽出に用いる植物素材についても、特定の地域で生産される茶葉や果物、サステナブルな素材なども取り入れ、それぞれの味わいや香りを考慮しつつ、様々なシチュエーションや気分に合うレシピの開発を進めているという。

前田さんいわく、抽出機も日々改良を重ねており、それと並行して和食やイノベーティブフレンチなどの飲食店に無償で貸し出しているとのこと。

「私達が想定していなかった素材を組み合わせてオリジナルドリンクを作っている店舗もあり、それを自社レシピに活用させて頂くこともあります。こうして、いろんな方々と一緒に新たなレシピを開発しながらプレミアムノンアルコールの市場を創り出していく。当社はそれを実現するためのプラットフォームであり、プレミアムノンアルコール飲料がもたらす体験を多くの皆様と共創していきたいと思っています」 COLDRAW株式会社が目指すのは、料理とのペアリングにとどまらず、ノンアルコール飲料の可能性を広げ、特別な一杯がもたらす価値を最大化すること。それは、飲食店の売上向上や新たな顧客層の開拓、ラグジュアリーな食体験を求める消費者の満足度向上にも繋がるはず、と前田さん。同社の事業が飲食業界全体に新たなビジネスチャンスをもたらすことを大いに期待したい。

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