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vol.9食を通した事業共創と併せ、日本橋で進むライフサイエンス分野での連携コミュニティ拠点として機能する飲食店【三井不動産 ✕ LINK-J】

コンセプトの設計から都市実装まで、ワンストップで食の事業開発をサポートするプラットフォーム「&mog by Mitsui Fudosan」。今春、日本橋を拠点にスタートしたこのプロジェクトのキーワードは〝街で育む、未来の食〟。三井不動産が食に関わるパートナー企業と共に、新たなイノベーションを生み出すためのさまざまな活動を行なっています。
「&mog王国」では毎月開催されるプロジェクトのイベントや最新ニュースをご紹介。日本橋から始まる新しい食の潮流をレポートします!

店舗を運営する株式会社ファイアープレイスの平野諒さん(右)とコミュニティマネージャーの伊藤慎一郎さん(左)。

世界的にライフサイエンス分野への注目が集まる中で、「&mog by Mitsui Fudosan」による食の産業創成を目指す三井不動産では、それと同じように、ライフサイエンス分野での産業創出を推進し、イノベーションの創出に貢献している。

その一端として、2016年に立ち上げたのが『LINK-J』だ。これは、ライフサイエンス分野に従事する人々のための人と情報の交流プラットフォームとして、アカデミアや産業界を巻き込んで設立した一般社団法人。ライフサイエンス領域での「オープンイノベーションの促進」と「エコシステムの構築」を目的としている。

日本橋は古くから、製薬会社が多く集まる街。そこで三井不動産ではライフサイエンス関連の多様なプレーヤーが入居する「日本橋ライフサイエンスビルディング」の展開や、会議室・オフィスなど交流の拠店となる様々なスペースを15か所ほど用意している。その一つである「日本橋ライフサイエンスビルディング8」の1階に2024年にオープンしたのが『Dining & Bar Genomic Giraffe』だ。昼はカフェ、夜はバーとして地域の人々も巻き込んだ幅広いコミュニケーションの場を提供する一方で、『LINK-J』 と連携し、ライフサイエンス分野でのコミュニケーションラウンジとしての機能も果たしている。

『Dining & Bar Genomic Giraffe』を運営するのは、「場」を起点に「横の人間関係」を拡げることを役割とした共創推進事業を行う企業・ファイアープレイスだ。

地域と人がつながる仕掛けを考えるスタッフが運営し、さまざまなイベントが開催される「Dining & Bar Genomic Giraffe」。

「当社は“つながり”という言葉をキーワードに事業展開をする会社です。仕事の内容を大きく二つに分けますと、まず一つは共創推進事業です。例えばシェアオフィス、大型商業施設などで、人と人が偶発的につながり、そこから共創が育まれていく、その仕組みづくりとコミュニティ運営に伴走しています。都市圏に限らず、ローカルにおいても同様の業務を行っています。もう一つは、こちらの『Dining & Bar Genomic Giraffe』のように、実際の飲食事業を手掛け、日々の業務を通じて人と人の横のつながりを育んでいます」

そう話すのは、ファイアープレイスのコンサルタント・平野諒さんだ。

「当社のビジネスは、川崎のマンションの屋上にバーベキュー場を作ったことが始まりです。そこではただ飲食を提供するだけではなく、その場を通して学生と社会人のつながりを作るとか、地域の生産者と都市をつなぐ、といった活動を行なっていました。そこで三井不動産さんのような大手デベロッパーをはじめとする「場」を持つ方々から、自分達の持っている場所でもこういうつながりを起こして欲しい、というお声がけをいただくようになったんです」

コの字形のカウンターは人と人が顔を合わせ会話が生まれるようにと、内側までお客様が入れるように考えられたデザイン。

『Dining & Bar Genomic Giraffe』の前身ともいえるのが、日本橋・人形町にあった『日本橋CONNECT』という貸し切り制の鉄板焼き兼Barのお店。「食材を自由に焼いて楽しむ」いうコミュニケーションを生む業態を生かして不定期イベントを行ったり、個性豊かな日替わり店主のバーが現れたりと、様々な人間関係をつなぐ場として機能していたという。残念ながらビルの老朽化が進んで閉店することとなったが、そのタイミングで、現在の場所でお店をやって欲しいと三井不動産から声がかかったのが『Dining & Bar Genomic Giraffe』の始まりだ。

「日本橋は薬の神様も祭られていますし、江戸時代から薬種問屋が集まった、薬取引の中心地として栄えた場所です。今も多くの製薬企業が集約していますし、三井不動産さんが立ち上げたプラットフォーム『LINK-J』もあって、日々オンラインイベントが開催され、活発に活動しています。ところがオフラインでは実際につながる場がなく、それが課題となっているというのです。そこでライフサイエンス企業が集まるこのビルで、オフラインでのつながりを作ってくれたらうれしい、ということでした。2カ月に1度ほどですが、実際にこちらでは対面で話せる集まりが行われているんですよ」と平野さん。

店内ではクラフトビールやワインにあうハンバーガーやベーグルサンドが楽しめる。

『Dining & Bar Genomic Giraffe』の通常営業では、ランチでベーグルサンドやコーヒーが楽しめるほか、夜はクラフトビールやワインなどバラエティ豊かなお酒が揃う。また様々なイベントや貸し切りパーティにも気軽に対応してくれる。メニューもオリジナリティあふれるものを用意するが、そのほかに「実は期間限定で、&mog by Mitsui Fudosanのパートナー企業が作る植物性素材クリームを使ったメニューをお出しする予定です。これはまだ市場に出回っていない商品なので、テストマーティングもかねた試みなんです」という。

「集まる場があることで、いろんな可能性が生まれると思います」と、伊藤さん。
「新しい出会いは新しい事が始まる大きなきっかけになる」と平野さん。

実際にメニューを考えたという店長の伊藤慎一郎さんは「初めての経験でしたので、だいぶ苦労はしました。でも試作の打ち合わせなどで開発者の方に直接お会いしたり、話を聞いたりできることで、やりがいがありました。メニューをお客様に紹介する時にも、背景などがお話できるのでおすすめしやすいと思います」と話す。この新メニューの登場は1月初旬からの提供を予定しているというから楽しみだ。内容は発表を待ってのお楽しみ。

また店づくり、というところでは、店舗空間にひと工夫を加えているという。

「店内はお客様がなるべく回遊するように考えられているんです。例えばビールやワインのセラーをわざと壁側に造っていますので、少し手間ではありますが、お客様には歩いて取りに行っていただきます。そうすることで他の方との接点が生まれることを想定しています」と伊藤さん。さらに様々な本業を持つ〝コネクター〟と呼ばれるスタッフが30人近くいる。彼らが時々店に立つことで、異業種の人々が交流したり、コネクターのつてで店にやって来た人達が地元の人とつながったりと、思いがけない出会いのきっかけづくりを仕掛けているのだ。

メッセージが付けられた「結びボトル」。飲んだ人はボトルにメッセージを結び、ボトルオーナーに返信をするのが約束。

その仕掛けの一つとして続けているのが、店長・伊藤さんのアイデアという『結びボトル』だ。これはウイスキーなどのボトルキープをする時に、そのボトルを入れた人が「登山が好きな人とつながりたい」などというメッセージをボトルに下げておく、というもの。そのメッセージを読んで共感したお客様は、ボトルのお酒を1杯飲むことができ、代わりに御礼の返事やコメントをおてがみに残す。ボトルを入れた人は再来店した際、そのおてがみを読むことができ、これにより全く知らない人同士のつながりが自然発生するという。

「ただそこにコンテンツがあるだけではなく、どういう人が集まってくるか? という要素もすごく大事にしています」とは平野さん。店にやってくるのは、近隣に住む人、職場が近い人など背景は様々だが、日本橋というキーワードでつながる人々だ。そこから人間関係が広がって何かが生まれるような出会いを作りたいという。

そのほかにも地元とつながるイベントも積極的に企画されている。例えばハロウインの時には仮装して地元の飲食店をはしごするイベントを計画したこともあるとか。来年1月には地元商店街との餅つきイベントを行う予定だ。

「いわゆるオンライン的なつながりだけでなく、直接顔を合わせてつながることを三井不動産さんは大事にしていらっしゃると感じます。僕らもそういう場作りをすることや、つながりを紡ぐみたいなところを大切に考えている。そこが三井不動産さんにとても共感できるところなのです」と平野さん。

両者の目指すところは同じであり、これからも日本橋という街で未来に続く〝つながり〟を育みたいと話す。『Dining & Bar Genomic Giraffe』はその拠点として活躍する場になっていくのだろう。

■店舗データ
東京都中央区日本橋堀留町1-3-15 ライフサイエンスビル8 1F
TEL 03-5962-3443
10:00〜23:00(土日祝は〜17:00)
https://genomicgiraffe.com/

■クレジット
text:Jun Okamoto
photo:Yoshiko Yoda

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