vol.7 あの店のあの味を、日本はもちろん世界へ! 厳選お取り寄せグルメサービス「mitaseru」 が進める飲食店の課題解決とおいしさの継承 【三井不動産 ✕ mitaseru JAPAM】

コンセプトの設計から都市実装まで、ワンストップで食の事業開発をサポートするプラットフォーム「&mog by Mitsui Fudosan」。今春、日本橋を拠点にスタートしたこのプロジェクトのキーワードは〝街で育む、未来の食〟。三井不動産が食に関わるパートナー企業と共に、新たなイノベーションを生み出すためのさまざまな活動を行なっています。
「&mog王国」では毎月開催されるプロジェクトのイベントや最新ニュースをご紹介。日本橋から始まる新しい食の潮流をレポートします!

名店の味を忠実に再現し、超急速凍結
湯煎や自然解凍でそのおいしさが楽しめる
新たなグルメプラットフォーム
知る人ぞ知る名店や予約の取れない超人気店、ミシュランガイド掲載店まで、三井不動産グループが厳選した有名飲食店の味をお取り寄せできるグルメプラットフォーム「mitaseru(ミタセル)」。2023年4月のサービス開始から順調に業績を伸ばし、今年4月には運営主体となる「株式会社mitaseru JAPAN」を設立。今後は海外販売も視野に入れながら、2026年までに参画100店舗、2030年までに事業規模50億円を目指す。
「mitaseru」の特徴は、一般的な監修商品とは異なり、店舗から提供されるレシピに従って専属の料理人がキッチンで手作りしていること。さらには、指定食材の仕入れから調理、急速冷凍加工、販売までを一気通貫で請け負うことで、飲食店と伴走する独自のビジネスモデルを構築した。
本サービスの発案者であり「株式会社mitaseru JAPAN」の取締役を務める佐々木悠さんは、事業発足の経緯をこう語る。
「きっかけは、コロナ禍で多くの飲食店が苦しんでいる状況を目の当たりにしたことでした。また、人手不足や食材費の高騰など、飲食業界が抱える課題も深刻です。そんななか、世界中に自身の料理を届けたいという料理人の夢と、忙しい中でもおいしい料理を一手間で食卓に並べたいという顧客の想いを、共に“満たせる”本サービスを構想し、三井不動産グループの事業提案制度『MAG!C』に応募して事業化に至りました」
店舗の選定にあたっては、老舗の名店が数多く存在する日本橋を参画店舗強化エリアとし、日本橋で食の事業開発を支援する「&mog by Mitsui Fudosan」を所管している日本橋街づくり推進部が全面的にバックアップ。併せて、「日本橋ゆかり」店主・野永喜三夫さんをはじめ「mitaseru」のコンセプトに早くから賛同した店舗の協力も仰ぎながら、2年間かけて事業検証を行ったという。



「日本橋ゆかり」では「具たくさんの豚汁」(写真左)をはじめ、食べ飽きずほっこりする
〝お袋の味〟をテーマにした商品を「mitaseru」で発売中。野永 喜三夫さんは(右)、親子三代にわたって宮内庁への出入りを許され、数々の式典で料理を担う老舗名門店の三代目。伝統を守りながら日本料理の新しい可能性を発信し続けている。
商品開発で最もこだわっているのが、店舗で提供される料理と同じクオリティの味を究極まで再現することだ。「食材の産地はもちろん、味噌や醤油、みりんなどの調味料も各店から指定されたメーカーのものを使っています。冷凍加工という性質上、レシピ通りに作っても解凍すると味や食感が変わってしまうことがあるのですが、何度も試作を重ねながらおいしさを追求し、店舗にOKをいただいた商品だけを販売しています」と佐々木さん。野永さんも、「再現度が驚くほど高く、安心して“ウチの店の料理”として製造・販売をお任せしています」と太鼓判を押す。
そもそも日本の飲食事業は、世界からも高い評価を受けながら、立地や客席数が売上の制約となっている上に、人手不足という背景が構造的に絡み合い、拡張性という点が業界の課題として指摘されていたという。「mitaseru」ではそれらの課題解決に向けたビジネスモデルを実現しており、他社のお取り寄せサイトとの差別化にも繋がっていると、佐々木さんは続ける。
「飲食店側のメリットとしては、人材確保や設備投資などを負担せずに事業を拡大できますし、立地や客席の規模に限定されることなく、お店と同じ味を多くの方々に体感していただくことが可能です。さらに、三井不動産が有するリアルアセットや会員基盤を活用した商品販売によって、飲食店独自ではリーチできない顧客にもお店の魅力を届けることができるのです」

株式会社mitaseru JAPAN 取締役の佐々木悠さん。コロナ禍の飲食店休業の経験を元に「mitaseru」を発案。三井不動産株式会社ビジネスイノベーション推進部で事業検討ののち、2024年4月「株式会社mitaseru JAPAN」を設立。
こうした「mitaseru」ならではの強みを活かして始まった「美味しいの継承」プロジェクトにも注目が集まっている。これは、惜しまれながらも様々な理由で閉店を余儀なくされた人気店のメニューを復刻し、味と技を受け継いでいくというもの。現時点で2店舗の復刻商品が販売されており、今後も後継者問題やテナント契約上の課題から営業の継続に悩む店舗への展開を進めることで、失われゆく味の継承に貢献したいと、佐々木さんは意気込む。

「&mog by Mitsui Fudosan」との協業も進んでいる。その一つが、&mogで繋がりのあった「合同会社シーベジタブル」の海藻を使用したコラボ商品の開発だ。今年9月から日本橋の一流料理人4人が手がけた新商品をリリース。パートナー企業である日本橋三越本店のイベントでも対面販売され、オンラインとオフラインからアプローチを行った。本コラボにも参画した野永さんは、「環境配慮とおいしさを両立したシーベジタブルに興味を持ち、若い世代にも楽しんでもらえるメニュー作りに挑戦しました。これを機に、『mitaseru』の認知度が上がり、来店にも繋がると嬉しいですね」と期待を寄せる。
「mitaseru」購入者へのアンケートによると、ユーザーの約9割が40代以上で、「食の安全に配慮したい」と考える人が8割超という結果が出た。さらに、年齢を重ねて“安心かつ上質で豊かな暮らしをしたい”という声や、30~40代の働く世代が在宅勤務時のランチに利用するなど“プチ贅沢なものを手軽に食べたい”という声も確認しているという。こうした顧客ニーズを踏まえて、販売チャネルの拡大にも着手。三井不動産グループが管理する大規模マンションや商業施設および駅に無人販売機を設置し、生活動線上での「ちょっと買い」需要に対応。また、三井不動産グループのシニアレジデンス「パークウェルステイト鴨川」では、「mitaseru」の一部商品をアラカルトメニューとしてダイニングで提供している。
最後に、「&mog by Mitsui Fudosan」の実働部隊である吉田信貴さんは、「mitaseru」との連携の展望について、次のように語った。
「両者は『日本の食産業・食文化の発信』という共通のビジョンを掲げており、共創のチャンスは大いにあると思っています。料理人の優れた技術を継承し、日本の飲食業界を世界に誇る産業にしていく。そんな想いを共有しながら新たな食体験を広く発信していく予定です」
■クレジット
text:Kimiko Honma
photo:Yoshiko Yoda